カーボンニュートラルに向けた取り組み
ガバナンス
旭有機材グループは、気候変動に関して経営上の重要課題として認識しており、特にカーボンニュートラルに関するリスク・機会をサステナビリティ推進委員会で審議・管理し、その内容を定期的に取締役会に付議・報告します。サステナビリティ推進委員会の委員長は社長執行役員が務め、半年に1回以上のサステナビリティ推進委員会で審議するとともに、必要に応じて取締役会に付議・報告します。
取締役会ではカーボンニュートラルに関するリスク・機会の課題を共有し、目標管理や取り組み推進に向けた議論を行います。
リスクマネジメント
旭有機材グループは、カーボンニュートラルに関するリスクを重要なリスクの一つとして位置づけ、管理を行っています。GHG排出量を年1回把握するとともに、目標に対する取り組みの進捗状況とあわせてサステナビリティ推進委員会に報告しています。事業経営に影響すると思われる事案に関しては、委員会より取締役会に報告、審議されるとともに、その他の事業リスクを管理するリスク管理委員会とも状況共有し、グループ全体の対応にあたります。
戦略
分析の前提
シナリオ分析については、国際エネルギー機関(IEA: International Energy Agency)で公表されているNZE2050や、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC: International Panel on Climate Change)で公表されているSSP5-8.5等を参照し、「脱炭素シナリオ(1.5℃~2℃シナリオ)」と、「高排出シナリオ(4℃シナリオ)」の2つのシナリオを設定し、2030年における当社への影響を分析しております。
1.5℃~2℃シナリオ(脱炭素シナリオ)
気候変動の影響を抑制するためにカーボンニュートラル実現を目指した取り組みが活発化し、世界の平均気温を産業革命期以前と比較して1.5~2℃未満に抑えることを目指したシナリオ。1.5℃シナリオでは、移行リスクの中でも政策・法規制リスクの影響が2℃シナリオに比べて大きくなると想定されている。
<参考にしたシナリオ>
・ Net Zero Emissions by 2050 Scenario
・ IPCC SSP1-2.6
・ PRI Forecast Policy Scenario
4℃シナリオ(高排出シナリオ)
気候変動対策が現状から進展せず、世界の平均気温が産業革命期以前と比較して今世紀末頃に約4℃上昇するとされるシナリオ。物理リスクにおける異常気象の激甚化や海面上昇リスクによる影響が大きくなると想定されている。
<参考にしたシナリオ>
・ IPCC SSP5-8.5
気候関連のリスクおよび対応策の特定
分類 |
要因 |
財務への潜在的な影響 |
財務インパクト |
対応策 |
リスク |
機会 |
移行リスク |
政策・規制 |
炭素税導入・炭素税率の上昇 |
- 炭素税が導入され、CO2排出量に対して炭素税の負担が発生
- 電気料金の上昇による製造費用の増額
- 炭素設備機器への投資コストの増加
|
- 原油価格の低下により樹脂製品の製造コストが下がり、競合優位性の構築が可能(管材システム、樹脂)
- 脱炭素の機運が高まり、再生可能エネルギーとしての地熱発電所の開発増加(水処理・資源開発)
|
大 |
- 再生可能エネルギーへの切り替え
- 省エネルギー設備の導入
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製品に関する規制強化 |
環境関連情報の計測・表示への対応コストの増加 |
積極的な環境関係情報の計測・表示による自社製品の競合優位性構築 |
大 |
早急な自社製品の環境関連情報の見える化対応 |
原材料に関する規制強化 |
使用する原材料や自社事業が規制対象となることによる製造コストの増加や売上の減少 |
早期規制が予想される原材料から、環境影響の少ない原材料に置き換えることによる競合優位性の構築 |
小 |
環境に配慮した原材料の使用 |
プラスチック製品規制 |
プラスチック由来の包材の価格上昇による調達コストの増加 |
バイオマスプラスチック包材の活用による価格上昇リスクの回避及び脱炭素貢献 |
小 |
バイオマスプラスチックの活用 |
循環型社会への移行加速、規制強化 |
環境汚染抑止の観点における廃棄にかかるコストの増加 |
循環型社会に向けたリサイクル可能容器などの導入をすることにより、環境意識の高いバイヤーの獲得が可能(管材システム、水処理・資源開発) |
小 |
- 生産工程における廃棄物の削減(管材システム、樹脂)
- 請負工事における廃棄物の削減(水処理・資源開発)
- 社内のリユース/リサイクル活動の促進
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技術 |
低炭素設備の導入 |
低炭素技術や製品開発への投資コストの増加 |
低炭素技術や製品開発への早期対応による付加価値の創出 |
中 |
環境対応製品の研究・開発の早期化 |
エネルギーミックスの変化 |
再生可能エネルギーの増加により、短期的な電力価格の高騰 |
ー |
中 |
- 省エネルギー設備の導入
- 自家消費型再生可能エネルギー設備やPPAスキームの活用
|
低炭素原材料への切り替え |
- 生物由来の低炭素原料を使う必要の高まりによる原材料調達コストの増加
- 原材料の切り替えにより、現在の製品性能の維持が困難になる(管材システム)
|
バイオマスプラスチックを活用した樹脂製品の製造・提供による顧客のカーボンニュートラルへの貢献(樹脂) |
大 |
サプライヤーの脱炭素化へのインセンティブ付与 |
市場 |
消費者選好の変化 |
環境配慮要請の高まりによる石油由来製品の需要減少 |
- EV車両の増加に伴う需要増加(管材システム、先端材料:半導体の需要増加/樹脂:軽量化部品の需要増加)
- 省エネ志向の高まりによる断熱材製品の需要増加(樹脂)
|
大 |
|
原材料費の上昇 |
炭素税導入による製品原価の高騰 |
脱炭素原料を用いた製品開発による、競合優位性の確立 |
大 |
グリーン調達の促進 |
物理リスク
| 慢性 |
平均気温上昇、降水パターンの変動 |
- 労働環境の悪化、気候変動起因の病気による従業員の生産性低下
- 原材料の供給途絶による、調達コストの増加、生産能力の低下
- 干ばつなどによる水不足および水質悪化による製造の遅延または停止
- 製品の製造、保管、物流におけるコストの増加
|
- 大雨や洪水頻度の増加による請負工事需要の増加(水処理・資源開発)
- BCP対策の取り組み強化で安定した事業活動の継続、収益の確保
|
大 |
- 感染症や熱中症への対処等の啓もうと対応フローの作成
- 気温上昇に合わせた労働環境の整備
- サプライチェーンネットワークの強化
- 輸送時の温度管理必要性検討
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海面上昇 |
- 沿岸地域の施設・設備被害による輸送の遅延または停止
- 事務所移転コストの発生
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大 |
- 生産拠点のBCP策定と継続的な見直し
- 生産拠点の分散化
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急性 |
台風や洪水などの激甚化 |
洪水による生産拠点浸水に伴う生産能力の低下 |
大 |
- 生産拠点の嵩上げや重要な設備の移設
- 生産拠点のBCP策定と継続的な見直し
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※)シナリオ分析は2023年4月実施
※)財務インパクト(損益への影響額)
大:10億円以上
中:10億円未満、1000万円以上
小:1000万円未満
指標・目標
温室効果ガス(GHG)排出量削減目標
気候関連問題が自社事業に及ぼす影響を評価するため、GHGプロトコルの基準に基づき温室効果ガス排出量の算定(Scope1、2、3)を実施しております。自社温室効果ガスの削減目標については、基準年度を2021年とし、2030年にScope1、2において42%削減を目指しています。今後は、2050年に向けた長期目標についても策定を進めてまいります。
※2023年4月時点での目標設定値