クウェート国は中東アラビア半島に位置し、東側がペルシア湾に面した人口およそ430万人の国です。国土のほぼすべてが砂漠気候のこの地域では、 海水を飲み水に変える工場「海水淡水化プラント」と「火力発電所」が結合された複合施設(IWPP/Independent Water and Power Plant)が国民の生活を支えています。
クウェート国に現存するIWPPの中でも電力と飲料水の生産量が国内トップ3の1つであるアズールノース発電・造水プラント(The Az-Zour North power and water plant、 以下AZN IWPP)。
今回はそのプラントのメンテナンス会社the AZN Operation and Maintenance Company (以下AZN O&M)のCFO(Sagar Damaniさん、以後サガールさん)と同会社のメンテナンス マネージャー(Atikur Rahmanさん、以後アティカーさん)にお仕事の重要性と使用して頂いている「ASAHI AV」の バルブについて語っていただきました。AZN IWPPでは稼働の初年度(2016)から「ASAHI AV」のバルブをご利用頂いております。
(左:サガールさん、右:アティカーさん)
ASAHI AVバルブが使用されているAZN IWPPとは?
AZN IWPPは首都クウェートから南に約100km離れており、南側はサウジアラビアとの国境、東側はペルシア湾に面しています。AZN IWPPはガス火力発電と海水淡水化プラントを複合する施設で、クウェート国の約12%の電力と、約25%(約450,000㎥/日)の飲料水を生産しています。
脱塩された飲料水と生産される電力はクウェート電気・水道省(MEW/Ministry of Electricity and Water)と40年間の長期契約(ECWPA/ Energy Conversion and Water Purchase Agreement)を締結しており、今後も国の成長と発展に寄与していくこととなっています。
この工場の海水を飲料水へ変える仕組みは蒸留法の中でも多重効用法 (MED/Multi-Effect Distillation)を採用しています。これは複数のチューブに海水を流し、隣接する発電所の余剰熱を利用して、段階的に上昇する負圧のもとで海水を蒸発させる仕組みです。AZN IWPPのメンテナンスと設備運営を担う会社AZN O&Mは、プラントの出資者でもあるフランスの水処理会社engieと住友商事が50%ずつ出資しているジョイントベンチャー企業です。
絶対に止められない責任
サガールさん:AZN IWPPのメンテナンス業務に携わり今年で8年目となります。私たちが住むクウェートは国土のほとんどが砂漠ですので、水源がほぼないといっても過言ではありません。従って、我々のような造水プラントが海水から飲み水を作って安定的に供給しており、その量はクエート国の飲料水の98%程度といわれています。我々が管理する工場で生産される飲料水は国民の生活に欠かせないライフラインとなっています。
国内の電力と飲料水の生産量において私たちはトップ3の発電所の1つです。その点において国や国民の皆様からの信頼も高く、私たちも強い責任感を持って仕事に携わっています。 私たちのプラントは2016年に商業生産を開始し、以後一貫して中断することなく24時間365日稼働しています。
私たちはライフラインの提供だけに限らず、クウェートの経済成長を支えている重要な担い手だと自負しております。この成長を継続するためにも高い品質と安定した性能を発揮してもらえる「ASAHI AV」のバルブはプラントにとってなくてはならないものです。
取水ポンプから海水を取水し、貯水槽に導水するまでのラインに設置し、次亜塩素酸の流量を調整するために使用
人の命のパイプラインを担っている責任の重さ
サガールさん:発電・造水のそれぞれの設備や装置には温度・気圧・流量など用途に合わせて数千カ所に金属や樹脂のバルブが導入されています。 重大な事故が起こらないように細かな管理基準に沿って技術者が定期的にメンテナンスを行っています。具体的には、ユニットの年次点検が挙げられます。各ユニットを計画的にシャットダウンし、目視検査と特定のプラントメンテナンスを行います。ライフラインである電力と飲料水の生産は止めることができません。そのため我々は緻密な計画のもとに施設の点検を行っております。
この施設は、近隣の施設が20年~25年程度経過していることと比べると、8年程度しか経過しておらず、比較的新しい施設です。軽微な不具合でも、設備のモニタリングによってその箇所を特定することが出来ますが、人の命のパイプラインを担っている責任は大きいので、私たちは設備にとって良いソリューションのご提案があれば、いつでもオープンな姿勢でありたいと思っています。
「ASAHI AV」のバルブは海水淡水化プラントの電気分解装置で多く使用されています。この場所は特に腐食が危惧される場所ですが、商業運転を開始した2016年から現在まで旭有機材のバルブの問題は報告されておりません。
特にこの電気分解装置ラインは24時間稼働しており、国民に安定した飲料水を供給し続けるための責任重大な工場です。私たちは保守点検のガイドラインに従いバルブの点検を行っております。私の記憶ではバルブのグランドパッキンや周囲の部品、ガスケット、ボルトなど、いくつかのパーツを交換しただけで、バルブ自体を交換した覚えはありません。2016年以降問題のない「ASAHI AV」のバルブが今後も40年間の長期契約(ECWPA)を遂行する上で変わらない品質を維持してくれることと信じています。
安心を与えてくれる
アティカーさん:メンテナンスを行うことにはバルブ等の製品自体のコストだけではなく、それらを交換する人件費や時間、交換する箇所が多ければ多いほど修繕費がかさんできます。従って私たち保守管理側としては、総合的に見て経済的であることが重要です。その点に於いて、旭有機材(設備の部品供給)と住友商事(出資者)と一緒になって様々な意見交換ができるというのは、私たちにとって大変頼もしいビジネス関係を築けていると思います。このような関係性は今度も持続していきたいですね。我々のプラントは年間稼働率97~98%を維持しています。 稼働率を下げない為にも旭有機材とのコミュニケーションは密にとっていきたいです。
私たちのようなIWPPは、電力と水を効率的に共同生成する形態の1つであり、その重要性が非常に高まっています。中東湾岸諸国では、過去20年間でIWPPが頻繁に使用されてきました。
最近では再生可能エネルギーに焦点が移っていますが、ここクウェートではIWPPが中心になっております。メンテナンスの頻度が少なくて済む「ASAHI AV」のバルブは非常にありがたく、
管理側の視点としては『安心』を与えてくれます。
海水淡水化プラントの海水取水ラインにて使用
新しいソリューションの大切さ
アティカーさん:現在ご提案いただいている、海水をプラントに取り込む際に使われているラインには金属製の大きな電動式バタフライバルブが導入されています。定期メンテナンスを実施していますが稀に流体の流れに誤作動が生じてしまうことがあります。そしてやはり樹脂バルブは『錆びない』という観点から、サイズや機能性の規格があえば将来的にもっと旭有機材のバルブを導入することも可能かと考えています。
また、これは難しいかもしれませんが、メンテナンスの頻度が少なく長持ちする、総合的に費用を抑えられる樹脂製バルブであれば、金属バルブから交換するということも検討できると考えています。これは我々にとって非常に大事で、安定した電力と飲料水を供給するという意味でも重要なメリットになると考えております。