お客様の声Customer Voice

ドリコとともに持続可能な事業を目指す

美幌地方農産加工農業協同組合連合会(ビホロ農工連) 参事 兼 工場長 今野洋一 氏

美幌地方農産加工農業協同組合連合会(ビホロ農工連)は、北海道の代表的な農産物であるジャガイモからでんぷんを製造し、その副産物からさらに飼料等を製造する独自の取り組みを行っています。同会が運営する工場は、年間約15万tのジャガイモの処理及び3万数千tものでんぷんを製造する日本有数の規模を誇ります。一方、この大規模な生産活動に伴い発生するでんぷん製造時の排水処理が長年の課題でしたが、その解決に貢献したのが旭有機材グループで水処理事業を展開するドリコ株式会社です。「ドリコのさまざまな知見が役立っている」という同会参事兼工場長の今野洋一さんに、ドリコの嫌気性排水処理設備「メタン発酵リアクタシステム」を導入した経緯や導入後の感想、今後の展望などについてお聞きしました。

※嫌気性排水処理:酸素を必要としない微生物によって排水中の有機物を分解する水処理法のこと。酸素が必要となる好気性処理の一般的な設備と比較して、省スペースで電力消費や余剰汚泥が少ない省エネルギーな処理法で、「メタン発酵リアクタシステム」はお客様の要望に応じて柔軟に設計できることが特長

検討を重ねて要望に応えた提案が決め手に

弊会は、1965年に5つの農協の出資によって設立されました。当初は農協から預かったジャガイモででんぷんの委託製造を行っていましたが、1975年からでんぷん抽出後に残ったタンパク質などで家畜用の飼料の製造を開始しました。でんぷん製造工場から出る排水には、大きく分けて2種類あります。1つは工場でジャガイモを受け入れた後、洗浄したり、原料ラインを流したりする時に出る排水です。もう1つが、製造工程ででんぷんを濃縮・精製したりするための製造排水です。いずれも臭気対策が必要で、前者は2010年に処理設備工事を実施しました。一方、製造排水に関しては、手付かずのままの状態でした。
2021年には、網走管内のでんぷん製造工場の合理化が行われ、5つあった工場のうち1つの工場に閉鎖を要請した結果、その分のジャガイモを弊会が受け入れることになりました。処理するジャガイモの量が増えると、必然的に排水量も増えます。製造排水の臭気対策が喫緊の課題になり、排水処理設備メーカー2社に相談しましたが、いずれも工期と費用の面で折り合いがつかず困っていました。そうした中、水処理コンサルタントに紹介されたのがドリコです。どうすれば弊会の要望に応えることができるかドリコは繰り返し検討を行い、すべての設備を新設するのではなく、一部の既存設備は改造することによって条件を満たす提案をしてくれたことが決め手になりました。

原料であるジャガイモの貯留設備
原料であるジャガイモの貯留設備
ジャガイモの受け入れと洗浄ライン
ジャガイモの受け入れと洗浄ライン

臭気が低減して近隣住民からも喜びの声

でんぷん製造工場の操業期間は、毎年8月下旬から11月下旬のジャガイモ収穫期にあたる約3か月です。操業期間後は、冬に排水処理設備が凍結しないように水をすべて抜いて運転を止める、立ち下げ作業を行います。また、嫌気性処理の設備は内部の微生物が水温低下により休眠するため、操業期間前の毎年8月に設備の温度を上げて微生物を目覚めさせ、再稼働に向けた立ち上げが必要になります。
導入初年度の2021年は、1週間ほど試験的に排水処理設備を試運転させました。2022年は9月から稼動させたものの、でんぷん製造工場の排水が他業種とは性質が異なっていたこともあり計画通りには進みませんでした。そこでドリコは、調査と分析を繰り返して問題の改善に努め、2023年からは安定した稼動を維持しています。工場操業期間後の立ち下げや期間前の立ち上げも、導入当初より短期間で完了するようになりました。臭気に関しては、はっきりと体感できるほど低減しており、近隣住民からも以前に比べてほとんど臭わなくなったという声が聞かれます。また、処理後の水の色度も、導入前に比べて良くなりました。

UASBメタン発酵リアクタシステムによる排水処理
UASBメタン発酵リアクタシステムによる排水処理
好気処理設備(増設した沈殿槽)
好気処理設備(増設した沈殿槽)

ドリコの多彩な知見で長期間にわたる貢献に期待

でんぷん製造工場は、エネルギー消費量が大きい施設のため、エネルギー効率の改善にも取り組んでいます。すでに「メタン発酵リアクタシステム」が生成するバイオガスを燃料として加温用蒸気を発生させ、それを嫌気性処理設備の加温に利用することで、9〜10月末までは重油の使用量をほぼゼロに抑えることができました。こうした省エネ対策などについても、豊富な実績を持つドリコだからこそ実現できたと感じています。
道内で嫌気性処理設備を導入したのは弊会が最も遅く、当初は知識がほとんどありませんでしたが、ドリコから排水処理状況の分析や設備の運転ノウハウなどさまざまなことを教わりました。弊会は、持続可能性が高い事業を目指して、今後は環境対策だけでなく省人化や業務の効率化も図っていきたいと考えています。これらに関しても、ドリコのさまざまな知見を生かした協力が、長期間にわたって貢献してくれると期待しています。

メタン発酵により生成したバイオガスは嫌気処理の加温の燃料として有効に活用している。右側の円柱タンクが脱硫塔、その左側の円柱タンクがガスホルダ
メタン発酵により生成したバイオガスは嫌気処理の加温の燃料として有効に活用している。右側の円柱タンクが脱硫塔、その左側の円柱タンクがガスホルダ
排水処理設備には薬品および硫化水素による腐食対策として当社の樹脂製バルブ(ASAHIAV™バルブ)を採用
排水処理設備には薬品および硫化水素による腐食対策として当社の樹脂製バルブ(ASAHIAV™バルブ)を採用
排水処理設備には薬品および硫化水素による腐食対策として当社の樹脂製バルブ(ASAHIAV™バルブ)を採用
お客様情報

美幌地方農産加工農業協同組合連合会(ビホロ農工連)様 工場住所:北海道網走郡美幌町宇報徳50番地 /今野洋一 参事 兼 工場長

工場外観

原料であるジャガイモの処理能力が1日あたり1,920t、でんぷん製造量が同400tと、道内屈指の規模を誇る工場を有する。この工場では、ジャガイモでんぷん抽出後の副産物を飼料として活用する仕組みを日本で初めて導入。「タンパク工場」として知られている。現在は、美幌町、女満別町、津別町、オホーツク網走、きたみらい、常呂町、摩周湖の7農協で構成。